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野村証券’13

*野村ホールディング  業績復調でも持ち株会社制で見えにくく

収益力が一段と復調してきている。1月31日に発表となった2013年3月期第3四半期(12年4~12月期)決算は経常利益に相当する「税引き前利益」で680億円と、前年同期比63%増の大幅増益となり、当期純利益は前年同期の104億円の赤字から248億円の黒字へと大きく改善した。 第3四半期のみの利益ベースでみると、税引き前純利益は130億円と前四半期に比べて63%減益の一方で、当期純利益は201億円は前四半期に比べて7.2倍まで増加し
た。
 ▲税引き前利益が減益となったのは、野村土地建物関連の不動産評価損241億円と、自社発行社債のクレジット・スプレッドの変化に伴う会計上の評価損失232億円が計上されたためだ。対して、不動産評価損のうち非支配持分の比率で評価損が差し引かれて、利益へのネガティブ・インパクトが大幅軽減され、当期純利益は好伸した。
 つまり、野村ホールディングスの収益は、昨年秋から冬にかけた第3四半期で急改善したワケだ。しかも、10、11、12月の単月ごとにみると、10、11月は国内株式市場は不調で証券市場には閑古鳥が鳴いていたと言っても過言ではない。それでも、第3四半期に大きく改善したのは、ひとえに12月の株式相場が復調したことに伴う寄与が非常に大きかったということになる。1月も12月と同様に株式市場は活況を呈しており、収益環境的には良好な状況が継続している。また、海外拠点を中心とするコスト削減策も順調に進展。12年9月に公表し
た10億ドル規模の追加的コスト削減計画は12月末までに50%の進捗をみている。今
回の決算では、09年3月期以来の海外全拠点黒字化を実現した。コスト削減策は今期末に進捗率78%まで拡大させる方針であり、市場環境が変わらない限り、海外拠点は黒字をキープする見通しだ。 今13年3月期決算は、東洋経済が「会社四季報」新春号(昨年12月発売)で予想している税引き前利益1300億円、当期純利益500億円の実現可能性を、いよいよ高めていく、と考えられよう。

  チャート画像                         .   野村ホールディングスは12年春、インサイダー関連事件などの反省を踏まえた新経営計画を発表。そのなかで、16年3月期に、「営業部門」「アセットマネジメント部門」「ホールセール部門」の主要3部門で2500億円の税引き前利益を目指すとしている。 今回の第3四半期のみ税引き前利益は719億円。市場環境は平坦ではないことを忘れることはできないものの、今第3四半期の利益水準を4倍して通期ベースに置き換えると16年3月期の目標水準を上回ることになる。 一方、こうした収益力の改善とは別に、今回の決算では、持ち株会社(ホールディングカンパニー)の傘下にある野村土地建物の存在が、不動産評価損によって、いやおうなくクローズアップされた。不動産評価損は、同社が設定した私募などの不動産ファンドが「投資終了近くなったために回収見込み額に応じて簿価修正した」ためであり、それが当期純利益への影響が軽微に終わったのは当社の投資持分が少なく、帰属損失が限定的になったからだ。 その意味では、最終的な影響度は限定的だったことになるが、証券業を中核とする野村ホールディングスが、グループ企業とはいえ、不動産事業会社という証券業とはかなり異質の事業体を傘下に配置していることが、はたして経営のわかりやすさ、理想的な収益バランスの形成という面で好ましいことかどうかは今後、議論される余地がある。米国では、ホールディングカンパニーの下に、あまりにも多様な事業体が配置されることで経営が外部からわかりにくいという批判が起き、制度の是非にまで議論が発展した。この点、野村ホールディングスが今後、どのような対応に出るのかは注目したい。