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財政赤字と経常黒字    
 2012/3/3付
昨年の貿易収支が31年ぶりに赤字。
所得収支が大幅な黒字を計上したことから、経常収支の黒字は維持された。
 日本の経常収支は1980年代以降、一貫して黒字なのだが、つい数年前までは貿易収支の黒字が経常黒字を生み出していた。
2005年を境に一変。所得収支の黒字が年々10兆円を超え、貿易収支黒字を大きく上回るようになった。
 

  このように中身は変わっても経常収支黒字が維持されているということは、日本経済全体として貯蓄超過が続いていることを意味する。実はこの貯蓄超過の構造もまた大きく変化してきている。
 90年代末までは、もっぱら家計の貯蓄超過が、企業や政府の貯蓄不足(投資超過)を支えていた。家計の貯蓄が国内の投資をまかなってなお余った部分が海外へ投資されていたということである。ところが90年代末以降は、企業が貯蓄超過に転じ、最近では家計を上回るようになってきている。
 以上のように、家計および企業の資金余剰が先進国最悪の財政赤字を抱える政府の資金不足を吸収している、というのが、いまの日本経済の資金循環の構造なのである。債務危機が深刻なユーロ圏諸国とは違って日本の国債への信認が保たれているのも、貯蓄超過・経常黒字構造が維持されているとみられているからであろう。
 この構図はどこまで持続可能なのだろうか。高齢化の進展とともに家計の貯蓄率は低下を続けているが、企業の貯蓄超過によってしばらくは経常黒字が続くというのが多数説のようだ。
 大事なのは、この間に消費税増税を中核とする財政改革の土台を築いておくことである。これに失敗すると、日本政府や日本国債への信認は一気に崩れることになりかねない。
 昨年の所得収支は14兆円の黒字を記録した。
企業が海外へ投資してきた果実が対外収支を支えるという、欧米諸国型の構造が定着。