2026年2月28日、米・イスラエルが「エピック・フューリー作戦」でイランへ協調空爆を開始。ハメネイ最高指導者が死亡し、イランは対抗措置としてホルムズ海峡を事実上封鎖。タンカー通航は一時ゼロとなり、Brent原油は3月にピーク126ドルへ急騰した。4月8日にパキスタン仲介で停戦合意、6月17日には「イスラマバード覚書(MOU)」署名で60日間の無償通航枠組みが発動。通航が回復しBrent原油は7月初旬に66ドル台まで下落した。
現在のホルムズ海峡には実質的に2つの航路が並存する。①南側回廊(オマーン領海寄り/米軍支援・JMIC認定)、②北側ルート(イラン指定)。米側は「全船舶に開放」と主張するが、イラン・ペルシャ湾海峡管理当局は「無許可通航により封鎖」と宣言。双方の主張は真っ向対立しており、日曜の通航隻数は6隻(6月18日以降平均約16隻)と急減した。
OFACは7月7日付の一般許可X1でイラン産原油の既存取引終了を7月17日まで認める一方、新規取引は認めておらず、イラン産原油商流の本格回復は遠い。海峡通過量の回復と商流正常化は「別問題」。UNCLOS通過通航規定上、イラン・オマーン両国の二重主権構造が問題を複雑化。
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ホルムズ海峡は通常、世界の海上原油貿易の約20〜25%、LNG貿易の約20%(世界最大液化基地カタール・ラスラファン経由)が通過するチョークポイント。カタールLNGには迂回代替路が存在しない。IEA Gas Market Report Q3-2026によれば、カタール・UAEのLNG産出は3〜6月で前年同期比約80%減を記録(億円/ドル)
| 時期 | Brent原油 | WTI | 通航隻数/日 | 主な事象 |
| 26/02下旬 | 〜70 | 〜67 | 平均約138 | 米・イスラエル空爆開始(2/28)。封鎖始まる |
| 26/03ピーク | 126 | 112超 | 〜ゼロ | 史上最大の供給混乱、戦略備蓄4億バレル放出 |
| 26/04〜05 | 80〜100 | 75〜95 | 限定的 | 4/8停戦→4/13米も逆封鎖開始、状況複雑化 |
| 26/06/17 | 83→78 | 80→75 | 回復基調 | MOU署名。60日無償通航開始。価格急落 |
| 26/07/02 | 70.66 | 67.54 | 24〜45 | 4ヶ月ぶり安値。サウジVLCC5隻(1000万バレル)出港 |
| 26/07/07〜08 | 73.75 | 70.44〜72 | 16前後 | 72時間クライシス。3隻攻撃→米140拠点報復。OFAC制裁緩和撤回 |
| 26/07/13(最新) | 79超 | 74台後半 | 6(日曜) | .IRGC封鎖宣言。米Centcom数十標的攻撃。Brent+4.3% |
①8月中旬――MOU無償通航期間(60日)満了。イランが通航料徴収権を主張する最大の節目。
②8月21日――米財務省対イラン制裁免除期限。更新なければイラン産原油商流が再び完全停止。
③南北航路論争――米軍支援の南側回廊vs.イラン指定北側ルートの「管理権」争いは恒久合意まで継続。UNCLOS通過通航原則の法的帰趨がICJ/ITLOSで争われる可能性。
④外交再起動――ドーハ協議(米イラン間接)の再開動向と、モジュタバ新最高指導者の対外姿勢が決定打となる見込み。Citiは年末Brent60ドルを予想するも、再封鎖シナリオでは100ドル超再燃も現実的。
- IRGC封鎖宣言の実力行使拡大→Brent100ドル超・日本タンカー再度足止め
- MOU失効(8月中旬)後の通航料課金制度化→UNCLOS違反訴訟・多国間対立激化
- カタールLNG長期停止→世界LNG供給が2012年以来初の年間減少、日本LNG調達危機
- サウジ東西パイプライン(日量700万バレル)が代替輸出の限界(平時通過量の25〜27%止まり)
- 機雷(最大80個推計)の除去遅延→保険引受拒否・VLCCルート確保不能の長期化
- GNSS/AIS妨害・スプーフィング継続による航行安全リスク
- モジュタバ新体制の強硬化→核開発再加速と制裁強化の悪循環
「価格正常化≠物流正常化」が本危機の核心。Brent70ドル台への下落は供給再開期待の先取りに過ぎず、タンカー運賃(湾岸VLCC日建て46.9万ドル)・LNG価格・肥料/食品コストの正常化は遅行する。現時点では「管理型の不安定通航」が継続しており、7/13のIRGC封鎖宣言で状況は再び厳格化局面に突入。MOU維持が崩れると、米による逆封鎖再発動→Brent100ドル超のシナリオが浮上する。日本は代替調達(イラク・UAE等)と備蓄運用の同時対応が必要な段階。OPEC+の増産(8月分+18.8万バレル/日)は当面の緩衝にとどまり、構造解決にはならない。*