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■新日鉄住金

 高炉3社の14年3月期業績は回復に転じる見通しだ。 新日鉄住金<5401.T>とJFEホールディングス<5411.T>の連結経常利益は前期比4─5倍 に拡大し、神戸製鋼所<5406.T>は黒字転換する。原料高で在庫評価損益が改善するほか、円安により輸出の採算が上向く。継続的なコスト削減も寄与する見込み。ただ、中国鉄鋼 メーカーによる増産に加え、韓国と台湾の高炉立ち上げにより、アジアの供給過剰感が一 段と強まる見込みで、市況次第では収益回復ペースが鈍るリスクもある。 
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  •  トムソン・ロイター・エスティメーツによると、過去90日間に予想を出した主要アナ 
  • リストの14年3月期連結経常利益の予測平均値は、日鉄住金が3101億円(アナリスト16人)、JFEが1973億円(同15人)、神戸鋼が188億円(同12人)。 
  • 13年3月期の会社予想に比べ、日鉄住金の利益は5.2倍(旧住友金属工業の上期合算 ベース比では4.4倍)、JFEは4.4倍に膨らみ、神戸鋼は250億円の赤字から黒字に転換する見通し。日鉄住金は昨年10月に旧新日本製鉄と旧住金が合併して発足。 13年3月期決算は旧新日鉄の上期分と新日鉄住金の下期分を合算した数値になる。
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  •  <円安が追い風に>   
  •  日鉄住金とJFEの今期増益をけん引するのは「在庫評価損益の改善とコスト削減がメーン。円安を背景に輸出鋼材のスプレッド(製品販売価格と原料単価の差)が改善することもプラス」と野村証券の松本裕司シニアアナリストは分析する。日鉄住金の場合、コスト削減が1200億円、輸出スプレッドと在庫評価損益の改善が各700億円の押し上げ要因になり、経常利益は3300億円に膨らむと予想する。 
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  •  前期は鉄鋼原料である鉄鉱石と原料炭の価格が下落し、在庫評価損が収益を圧迫した。 日鉄住金は前期に在庫評価損が770億円、高い価格で契約した原料の持ち越し(キャリーオーバー)が800億円に膨らみ、JFEも在庫など資産評価損が1500億円に達したとみられるが、今期は原料価格の上昇で在庫などの評価損益が改善する見通し。 また、前期は生産の効率化などで日鉄住金が1300億円、JFEが1200億円のコスト削減を実施。削減努力は今期以降も続く見通しで収益回復を後押しする。日鉄住金は統合効果もプラス要因。前期に経常赤字に転落した神戸鋼は昨年10月に設置した体質強化委員会で中期的なコスト削減策を検討中で、今期にスタートする新中期経営計画に織り込む予定。4月1日付で佐藤廣士前社長に代わり川崎博也新社長が就任しており、「新体制の下で体質改善効果をどれだけ出してくるのか注目される」(メリルリンチ日本証券の榎本尚志アナリスト)。 
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  •  1ドル100円も視野に入った円安も追い風となる。鉄鋼各社は原料を輸入し、製品を一部輸出しているため、為替収支は「中立」としているが、現行の円安水準が続けば、海外での価格競争力が高まり、輸出の採算は向上する。特に輸出比率が5割のJFEや44%の日鉄住金が恩恵を受けやすい。神戸鋼は鋼材輸出比率が27%と低く、業績回復スピードは競合他社より劣りそうだが、メリルの榎本氏は「建機事業でも円安メリットを享受できるほか、3月の建機販売は回復基調を示しており、決算では注目点が多い」と指摘する。 円安効果で自動車など大口顧客の業績が改善し、高炉にとっては鋼材の値上げ交渉を前期より進めやすいとの見方もある。ただ「造船など製造業の事業環境は依然として厳しく、全体では大きな値上げは見込めない」(外資系証券アナリスト)との声も多い。 
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  •  <アジアの供給過剰懸念>  
  •  鋼材出荷量は目立った伸びが期待されていない。日本鉄鋼連盟の友野宏会長(日鉄住金社長)によると、14年3月期の国内粗鋼生産は前期比横ばい、または政府の緊急経済対策や円安効果で若干増の見込み。鉄連の試算では経済対策が土木・建築分野の需要を50─65万トン押し上げるが、エコカー補助金終了に伴う需要の反増減が見込まれる自動車や、構造的な供給過剰に直面する造船向けの需要が落ち込む。ただ、円は韓国ウォンに対しても下落しており、韓国などからの割安な鋼材輸入は減る見込みで、国内勢にとってはプラスとなる。 
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  •  今期業績のリスク要因はアジア鋼材需給の悪化。中国鉄鋼メーカーは増産姿勢を崩しておらず、足元の中国の粗鋼生産は年率8億トン近い水準で推移している。さらに今期は韓国と台湾で1450万トンの設備増強が進み、下期の国際市況に悪影響を与える可能性もある。このため、円安で輸出の競争力が増しても、そのまま出荷量の拡大にはつながらないとの見方が優勢だ。 「日本の高炉は相対的に古くて小さいため、生産工程でいくらコストを削減しても、大型で高効率な海外勢の新型ミルにはかなわない」(外資系証券アナリスト)との指摘もある。日本勢が目指す海外展開の加速には投資資金も必要で「円安による一過性の収益改善に息つかず、国内設備の合理化を含む構造改革を進めるべき」(国内証券アナリスト)との声もある。 
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  •  各社の決算発表予定はJFEが23日、神戸鋼が26日、日鉄住金が5月10日。各社とも14年3月期業績予想の公表は「未定」としているが、例年通り、原料価格が不透明として公表を見送る公算が大きい。各社のコスト削減計画や、JFEが検討中のベトナムでの高炉一貫製鉄所建設に関する幹部発言に関心が集まりそうだ。神戸鋼は中計の発表日程について現時点では未定としている。 


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